こんにちは、ヤス@ロコ父さんです。
2019年は大手企業を中心に不採算の構造不況ビジネスから撤退・縮小する早期退職がブームになりましたが、2020年はコロナショックで更に構造不況ビジネスが増えたため、ブームを通り越して「早期退職ラッシュ」になった感」すらあります。
業績不振により会社やビジネスユニットの存続自体が危うくなった場合、中高年を対象とした一部の社員に退職してもらうことは、経営破綻するよりは全体最適としては理にかなっています。
しかしながら、止むを得ず会社を去ることになった中高年の社員の一人一人にとっては(自分もここに含まれますが;;)、単に全体最適だからという理由だけで納得することは出来ません。
そのため体力が残っている企業の場合は、通常の退職金に上乗せする形で「特別加算退職金」を支給することで、「形の上では定年退職に準ずる扱い」をして、早期退職(希望退職)に応募してもらうインセンティブとすることが一般的です。
各業種・業界を代表するような
「上場企業が早期退職する社員に対して、どのくらいの割増し退職金というインセンティブを与えているのか?」
に興味が湧いたので調べてみました。
上場企業は、会社都合の人員整理に伴う特別損失を出す際には、退職金の割り増し内容をおもに株主に向けて公開しています。
それらの情報を元にソロバンを弾いてみました。
※以下、金額などの数値には多少の誤差が含まれます。
芝浦機械(旧 東芝機械) 早期退職優遇
- 東証1部上場、産業用機械製造
- 直近の連結売上:約1,168億円
- 連結営業利益:約35億円
- 社員数:約3,200人(グループ連結)
- 主たる背景:自動車市場低迷で売上減、来期は通期赤字予想
- 早期退職実施時期:2020年4月~9月
- インセンティブ:特別加算退職金 + 再就職支援
- 早期退職人数:300名(予定、最大値)
- 特別損失額:24億円(見込み)
特別加算退職金:約800万円(1人当たり平均)
※コロナショックにより自動車関連メーカー向け産業機械の売上減
サンデンHD 早期退職優遇
- 東証1部上場、カーエアコン製造
- 連結売上:約2,049億円
- 連結営業利益:約34億円の赤字
- 社員数:約6,500人(グループ連結)
- 主たる背景:自動車市場低迷で受注減、来期は通期赤字予想
- 早期退職実施時期:2019年11月
- インセンティブ:特別加算退職金 + 再就職支援
- 早期退職人数:215名
- 特別損失額:14億円(見込み)
特別加算退職金:約650万円(1人当たり平均)
※主に中国の自動車市場低迷により自動車部品の売上減
NISSHA 早期退職優遇
- 東証1部上場、総合印刷業
- 連結売上:約1,732億円
- 連結営業利益:約43億円の赤字
- 社員数:約5,718人(グループ連結)
- 主たる背景:自動車向けプリント資材の受注減、来期も通期赤字予想
- 早期退職実施時期:2020年2月
- インセンティブ:特別加算退職金 + 再就職支援
- 早期退職人数:270名
- 特別損失額:21億円(見込み)
特別加算退職金:約780万円(1人当たり平均)
※ 自動車向けプリント資材の売上減
ノーリツ 早期退職優遇
- 東証1部上場、住宅設備製造
- 連結売り上げ:約1,800億円
- 連結営業利益:約25億円
- 社員数:約7,666人(グループ連結)
- 主たる背景:システムキッチンとバスの事業分野から撤退(100億円強の減収)
- 早期退職実施時期:2020年3月
- インセンティブ:特別加算退職金 + 再就職支援
- 早期退職予定人数:789名
- 特別損失額:80億円(見込み)
特別加算退職金:約1,000万円(平均1人当たり)
※利益の出ない事業(システムキッチン・バス)からの撤退による事業構造改革
ミツバ 早期退職優遇
- 東証1部上場、自動車部品製造
- 連結売り上げ:約3,042億円
- 連結営業利益:約85億円(利益急減)
- 社員数:約28,384人(グループ連結)
- 主たる背景:自動車市場低迷で受注減、赤黒ギリギリ
- 早期退職実施時期:2020年10月
- インセンティブ:特別加算退職金 + 再就職支援
- 早期退職予定人数:500名
- 特別損失額:41.8億円(見込み)
特別加算退職金:約836万円(平均1人当たり)
※コロナショックにより自動車部品の売上減
日本ケミコン 早期退職優遇
- 東証1部上場、電子部品製造
- 連結売り上げ:約1,146億円
- 連結営業利益:約29億円の赤字
- 社員数:約6,658人(グループ連結)
- 主たる背景:電子部品の需要減少
- 早期退職実施時期:2020年3月
- インセンティブ:特別加算退職金 + 再就職支援
- 早期退職予定人数:150名
- 特別損失額:8億円(見込み)
特別加算退職金:約560万円(1人当たり平均)
※コロナショックにより自動車向け・産業向け電子部品の売上減
LIXIL 早期退職優遇
- 東証1部上場、住宅設備製造
- 連結売り上げ:約16,944億円
- 連結営業利益:約391億円
- 社員数:約61,634人(グループ連結)
- 主たる背景:コロナショックにより需要低迷、大幅減益
- 早期退職実施時期:2020年6月
- インセンティブ:特別加算退職金 + 再就職支援
- 早期退職予定人数:500名
- 特別損失額:55億円(見込み)
特別加算退職金:約1,100万円(平均1人当たり)
※コロナショックによる売上減
まとめ
以上、早期退職募集に応募する「見返り」「インセンティブ」という位置付けの「特別加算退職金」を推測してみました。
これらの事例は一部に過ぎませんし、実際に上場企業で早期退職募集を行っていても、公表せず報道されないケースは沢山あります。
しかしこうして眺めて見ると、業界No.1の大手企業などは平均年収が1,000万円超ということもあってか、早期退職に伴う特別加算退職金も 1,000万円超 と優遇されています。
平均でこれですから「役職定年との合わせ技」だったりすると、この2倍くらいにはなるのでしょう。
(このレベルになると特別加算退職金だけで5年以上は生活できます、ほんの一部の人達ですが。。)
このレベルまで来ると、あまり文句を言う人も出なくなるのでしょう。
■ 傾向
- 構造不況業種が多い
デパート、印刷、エレクトロニクス、自動車
- 年収が高い会社は特別加算退職金も多い
一部週刊誌の取材記事によると、朝日新聞のケースでは平均値で2,000万円+αと言われています(公表されていません)
- 会社が黒字の内に行う早期退職優遇は金額面でも条件が良い
2度, 3度と早期退職募集を繰り返すことになると、ほとんどのケースが回を追うごとに割増額が減少する
(私が所属していた会社のとある事業部の場合はまさにこれに該当)
人を大事にしない会社に未来はあるか?
古い言葉では「経営資源の合理化」
新しい言葉では「事業構造改革」
ですが、「リストラ」って横文字を使うと「なんだかカッコいいことをしている」ような響きがあります。
でも端的に言えば「経営に失敗している」のです。
- 近年のサラリーマン経営者、経営幹部は目先の利益・株価しか見ないため
- おそよ話などしたこともない現場・前線の社員を切って
- リストラは株主のためです!と嘯いている
- 経営不振は自分の任期の前から仕込まれていたことなので
- 自分に100%責任がある訳ではない
という雰囲気?風潮?があると思っています。
遅かれ早かれ「リストラを仕掛けた側も会社から居なくなるケースが殆ど」ではありますが、「現場・前線の社員が会社のビジネス存続のために退職するのならば、同時に自分も退職する」くらいの高い志を持った責任者は近年では絶滅危惧種になってしまいました。
この状況は「どこか太平洋戦争の敗戦を思い出させる」のであります。
※何百万人もの現場や前線の犠牲の上に、責任者たち(例:戦争犯罪人たち)は生き残っていた
あらためて、
- 会社って誰のために存在しているの?
- 法人って呼ぶからには人間の集合体なんじゃないの?
- 株主も大事だけど社員はもっと大事なんじゃないの?
- 人を大事にしない会社に未来はあるの?
- 突き詰めると、今の会社制度・資本主義に未来はあるのか?
と考えさせられてしまいます。