こんにちは、ヤス@ロコ父さんです。
57歳で早期退職した時に最も納得行かなかったのが
「転職した人にとっては退職金への税制が不利であること」でした。
今回は
「どのような税制にするべきか?」
を書いてみます。
終身雇用を前提とした現行の退職所得への課税
現行の退職金に対する税制は、
- 勤続年数が長ければ長いほど非課税となる部分が比例して大きくなる
- つまり終身雇用を大前提とした税制である
- 時代遅れも甚だしい昭和の制度
- 転職と言うチャレンジをしたサラリーマンが退職金への課税ではバカを見る
- クビにならない公務員に都合のいい制度
です。
2022年10月18日に開催された政府の税制調査会の総会で、
退職金への課税の際に所得控除を受けられる「退職所得控除」について、
「これまでは勤続年数が長ければ長いほど実質的な税率が低くなった制度」を
「転職が普通になった時代に即する形で、勤続年数を問わずに一律の税率にすべき」
という意見が出されました。
有識者の方々は以前から問題視していた模様ですが、国会議員や法律の変更を支援する官僚たちは「この税制を改正するのには後ろ向きだった」と思われても仕方ありません。
例えば、給与の所得税については
「納税期間が長ければ長いほど税率が少しづつ低くなってお得感が出るような税制」
になってはいませんよね。当たり前ですが。。
つまり「所得の大小により税率が変わる累進課税」が基本的な考え方であり、
「納税期間が長いか?短いか?は税率に関係がない」という制度になっています。
ところが、退職金にかかる税金(退職所得税)については
「勤続年数が長いというだけで税率が優遇される」
という現実に早期退職したときに初めて気付かされました。
退職金にかかる税制・税率の「おさらい」
退職金(ここでは退職一時金が対象)に課せられる所得税(退職所得税)は、
通常の給与や賞与に課せられる税率とは異なります。
高額な一括所得でも徴収額が少なくなるように優遇されています。
具体的な退職金への課税については、
国税庁のホームページ:
で確認することができます。
やや面倒な計算式ですが、ポイントは
「勤続年数が長いと退職所得控除(非課税部分)が大きくなる」
ことです。
給与所得(賞与も含めて)に対しては、皆さんよくご存じの通り「所得金額に応じて税率が変わる」税制となっています。
つまり、
- 高額所得者に対しては所得税率が高く
- 低所得者に対しては所得税率が低く
いわゆる「累進課税」ってやつで、
- 沢山お金を得た人には税金も多く負担して頂く
ってことです。
ところが、
- 退職所得の税制はこれとは逆に、退職金が少ない人の方が税率が高くなる
ケースがあるのです。
勤続年数が20年と30年で比較してみる
私が57歳で早期退職した時に得た退職金からは(実質的な税率で)4%近くの税金が引かれていました。
想定では3%程度だろうと思っていただけにショックでした。
よくよく調べてみると、現行の退職金に対する税制は
「転職経験者にとってはかなり不利な税制」であることが判明しました。
「転職していない人」と「転職を経験した人」(私のこと)を例にあげて比較してみます。
■ 例1:勤続30年の人が退職金を2,500万円受け取った場合
退職所得控除額:800万円 + 70万円 x (30年 - 20年) = 1,500万円
課税退職所得金額:( 2,500万円 - 1,500万円 ) ÷ 2 = 500万円
所得税額:500万円 x 0.2 (税率) - 42万7500円 = 57万2500円
復興特別所得税額:57万2500円 x 0.021 = 1万2022円
合計の税額:58万4522円 ( 退職金の2.3% )
■ 例2:勤続20年の人が退職金を2,000万円受け取った場合
退職所得控除額:800万円 + 70万円 x (20年 - 20年) = 800万円
課税退職所得金額:( 2,000万円 - 800万円 ) ÷ 2 = 600万円
所得税額:600万円 x 0.2 (税率) - 42万7500円 = 77万2500円
復興特別所得税額:77万2500円 x 0.021 = 1万6222円
合計の税額:78万8722円 ( 退職金の3.9% )
いかがでしょうか?
なぜ、勤続年数が20年の人は(一般的な退職金制度上)退職金が少ないのに、
なぜ20万円以上も多く税金を取られるのでしょうか?
全くもって理解不能で不公平感きわまりない税制です。
公平な退職金への税制とは? どうあるべきか?
「勤続年数が短いゆえに少ない退職金をもらった人が多く税金を取られる」
という税制の理不尽さには憤りを感じずにはいられませんでした。
では、この不公平な退職金への税制をどう是正すべきなのでしょうか?
私の考えは以下です。
退職所得控除:一律 1,000万円 とする(勤続年数に無関係)
課税退職所得:控除額を引いた退職所得とする
退職所得の税率:3.5% とする
復興特別所得税額:0.5% とする
この前提で退職所得税を先ほどの例に適用して税額を計算してみます。
■ 例1:勤続30年の人が退職金を2,500万円受け取った場合
退職所得控除額:1,000万円
課税退職所得額:2,500万円 - 1,000万円 = 1,500万円
所得税額:1,500万円 x 0.035 = 52.5万円
復興特別所得税額:1,500万円 x 0.005 = 7.5万円
合計の税額:60万円 ( 退職金の2.4% )
■ 例2:勤続20年の人が退職金を2,000万円受け取った場合
退職所得控除額:1,000万円
課税退職所得額:2,000万円 - 1,000万円 = 1,000万円
所得税額:1,000万円 x 0.035 = 35万円
復興特別所得税額:1,000万円 x 0.005 = 5万円
合計の税額:40万円 ( 退職金の2.0% )
いかがでしょうか?
これが本来あるべき公平な退職金に対する税制だと思います。
- 退職金が1,000万円に満たない ⇒ 非課税(or 復興税だけ負担して頂く)
- 退職金が2,000万円くらい ⇒ 40万円
- 退職金が3,000万円くらい ⇒ 80万円
まあ、納税額が若干少ない気もしますが、そこは0.1~0.2%くらい微調整すれば良い話で、
現行の税制よりはかなりマシかと思います。
そもそもエンジニアの私がこんなこと言っていること自体、
「この国が病んでいる証(あかし)」とも思っています。
今後、早期に見直しされることを願うばかりです。
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