こんにちは、50代後半でリストラによる早期退職を経験したヤス@ロコ父さんです。
今ではもう2年前の2020年の話しになりますが、
退職時の金銭がらみのやり取りで、最も納得行かなかったのが
「転職した人にとっては退職金への税制が不利であること」
でした。
具体的には、
「退職所得控除(非課税の扱いになる金額)が、終身雇用制度を大前提とした税制であること」
でした。
私からすると
「現行の退職金への税制は時代遅れも甚だしい昭和の制度」
に映っていまして、
「団塊の世代(昭和20年代生まれの終身雇用を謳歌した世代)が定年退職した後の2010年過ぎには、さっさと退職金の税制を改正すべきだった」
と思ってきました。
ようやくその事実に役人や政治家が気付いたのか、
はたまた身内や支援者が、私と同じような目に会って「この制度はおかしい」と重い腰を上げたのか、笑
2022年10月18日に開催された政府の税制調査会の総会で、
退職金への課税の際に所得控除を受けられる「退職所得控除」について、
「これまでは勤続年数が長ければ長いほど実質的な税率が低くなった制度」を
「転職が普通になった時代に即する形で、勤続年数を問わずに一律の税率にすべき」
という意見が出されました。
これに対しSNSなどでは「退職金への課税強化につながる」といった非難の声が上がっていたようですが、
一般的なサラリーマンを対象に考えれば、これは勘違いです。
では、27歳と35歳で2回の転職を経験した私が、57歳で早期退職したときに実際に遭遇した退職金への課税の実態をご紹介したいと思います。
まずは退職金にかかる税制・税率の「おさらい」から。
退職金にかかる所得税の概要
退職金(ここでは退職一時金が対象)に課せられる所得税(退職所得税)は、
通常の給与や賞与に課せられる税率とは異なります。
高額な一括所得でも徴収額が少なくなるように優遇されています。
具体的な退職金への課税については、
国税庁のホームページ:
で確認することができます。
やや面倒な計算式ですが、ポイントは
・勤続年数が長いと退職所得控除(非課税部分)が大きくなる
ことです。
(引用元:国税庁HP 退職金と税)
給与所得(賞与も含めて)に対しては、皆さんよくご存じの通り
「所得金額に応じて税率が変わる」
仕組みとなっています。
つまり、「高額所得者は所得税率が高く」「低所得者には所得税率が低く」、
いわゆる「累進課税」ってやつです。
たくさんお金を得た人には税金も多く負担して頂くってことです。
ところが、退職所得の税制はこれと逆行しているのです。
これについて説明します。
過去3回の退職金について私の場合
私は27歳と35歳のときに転職しており、都合3回ほど退職金を頂いています。
転職している事により退職金トータルでは大幅に損をしています。
■ 27歳で1社目を退職したとき
4年間の勤続年数で給与水準が電気労連の最低水準でしたので退職金は月給の1ヶ月分くらいでした。(雀の涙)
■ 35歳で2社目を退職したとき
勤続年数は8年間で社員への処遇は良い会社でしたので退職金は月給の5ヶ月分くらい貰えました。
■ 57歳で3社目を退職したとき
昭和40年前後に生まれた世代が大量にいた大手企業でしたが、所属事業部が2018年あたりから経営不振となりリストラが始まって、大量採用世代の私にも肩叩きがきてしまいました。
処遇は良い会社でしたので、特別加算もあった退職金は(退職時の)年収の2.5倍くらいだったかと思います。
急な早期退職募集で実質的には肩叩きだったので、会社に対しては強烈な不信感が芽生えましたが、特別加算分があったお陰で、なんとか金銭的には納得できました。
ところが、
退職した翌月に郵送されてきた「退職所得の明細」を見たとたんに「あれっ?」と思いました。
具体的には「控除された税金の額」です。
税率で換算すると2%強だと思っていた退職所得税が、
実際には4%くらい引かれていたのです。
そこで私は退職金にかかる税制・税率を調べ始めました。
勤続年数が短いと退職所得税を多く徴収される
よくよく調べてみると、現行の退職金への税制は
「転職経験者にとってはかなり不利な税制」
であることが判明しました。
「転職していない人」と「転職を何回か経験した人(私のこと)」
を例にあげて比較してみます。
■ 例1:勤続30年の人が退職金を2,500万円受け取った場合
退職所得控除額:800万円 + 70万円 x (30年 - 20年) = 1,500万円
課税退職所得金額:( 2,500万円 - 1,500万円 ) ÷ 2 = 500万円
所得税額:500万円 x 0.2 (税率) - 42万7500円 = 57万2500円
復興特別所得税額:57万2500円 x 0.021 = 1万2022円
合計の税額:58万4522円 ( 退職金の 2.3% )
■ 例2:勤続20年の人が退職金を2,000万円受け取った場合
退職所得控除額:800万円 + 70万円 x (20年 - 20年) = 800万円
課税退職所得金額:( 2,000万円 - 800万円 ) ÷ 2 = 600万円
所得税額:600万円 x 0.2 (税率) - 42万7500円 = 77万2500円
復興特別所得税額:77万2500円 x 0.021 = 1万6222円
合計の税額:78万8722円 ( 退職金の 3.9% )
いかがでしょうか?
勤続30年の人が退職金を2,500万円受け取った場合の退職所得税: 約 58 万円
勤続20年の人が退職金を2,000万円受け取った場合の退職所得税: 約 79 万円
???
なぜ、勤続年数の少ない方の人が
(そもそも勤続年数が少ないため退職金も少ないのに)
20万円以上も多く税金を徴収されるのでしょうか?
全くもって理解不能で、不公平感極まりない税制だと思いました。
不公平な退職金への税制は速やかに是正すべき
「少ない退職金をもらった人が、多く税金を取られる」
という税制の理不尽さには憤りを感じずにはいられませんでした。
こんな税制、私にとっては
「定年まで確実に安泰でいられる公務員に都合の良い税制」
にしか見えません。
話が横道にそれますが、消費税の 8% ⇒ 10% の増税についても「しかり」です。
一見すると「たくさん消費する人からたくさん税金を徴収する」という公平な税制に見えますが、
「低所得者ほど所得に占める消費せざるを得ない金額の割合が高くなるため、
所得全体にかかる税率としてみた場合は低所得者になるほど税率は高くなる」
ことだと私は捉えていました。
話を退職金への税制に戻しますが、
「日本では雇用の流動性が低い」
「生産性の高い労働者が成長産業に移動しやすいようにするべき」
「雇用の流動性を高めることが経済全体の生産性を高めることにつながる」
なんてことが国の役人や政治家たちから盛んに言われてきましたが、
「退職金への税制に関しては、いまだに終身雇用が大前提のまま」
であり、
「政策が全くもってチグハグ」
です。
世の中の変化から10年は遅れている中央省庁の役人さん達に
「時代の変化に即した公平な制度へとタイムリーに変えて行く」
ことを期待するのは無駄だとしても、
政治家もマスコミも
「この差別的な税制について2022年に至るまで問題視してくれなかった」
ところに、日本の長期停滞・国際競争力の低下の縮図を見た気がしました。
今後、志のある政治家の働きにより
「現行の(終身雇用制度を大前提にした)不公平な退職金への税制」
が早期に見直しされることを祈ります。